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技術的なことや仕事に関することを書いていきます.

「人を動かす」を読んだ

いつの事だったか, 誰かが推薦していて買ったものの積み続けていた本を読みました. デール・カーネギーの「人を動かす」です.

人を動かす 新装版

人を動かす 新装版

本書は, 「人を動かす」, 「人に好かれる」, 「人を説得する」, 「人を変える」という観点で, うまく他人と接していくための原則(テクニック)を, 実例を盛り込みながら紹介してくれる本です. 内容としては, 以前読んだ「ハーバード流交渉術」と近しい(補足する)内容が多いように思いました. 読中の感想も似ていて, 突拍子のない内容は一切なく, 素朴というか, 手堅いというか, いろいろな意味で当たり前の事で, だからこそ案外意識出来ず, 日頃実施できていない... そういった原則が並んでいる気がします. 面白かったのは, 本を読みながら, 自分自身のこれまでの振る舞いや, 周囲にいた人たちの振る舞いを思い出すシーンがあって, 「無意識にこういう事していたなあ」とか, 「確かに, こういう振る舞いされると, お互いに, いい感じにやっていけたなあ...」といった気付きがありました. そういう意味での説得力もありましたね.

本書では, 「人を動かす」ためのいろいろな原則が紹介されていますが, その中でも印象深かったのは「誤りを指摘しない」でした. 結構, エンジニアという職種のはしくれとして仕事をしていると, 相手の誤りに気付いた時, そこに真っ直ぐにツッコんで正したくなる事が多いです. エンジニアどうしで会話している時などは, それでコミュニケーションがうまくいく時もありますが, 時と場合によってはそのツッコミによって相手が不快感を持ったり, あるいは警戒心を持ったりして, 結果としてそれ以降のコミュニケーションがうまくいかなくなる... という事も時折ありました. これは反省すべき点ですが, 自分自身も間違いを指摘された結果, 意気地になってしまったという経験は何度かあったりしますし.

そういった時の対応策の1つとして, 本書では(相手が明確に間違っていたとしても),

「恐らく私の間違いでしょう。私はよく間違います。一つ事実をよく考えてみましょう」

といった感じで, 相手と一緒に再考を促し, その結果として相手に対して「誤りを気づく手助けをする」のが良い, という事が書かれています. こういったコミュニケーションは, 正直に言えば面倒と思います. とは言え大事な会議(例えば, 部署間/会社間のリーダーが集まって相談や調整をする会議とか)で, 「それは間違っています!」とまっすぐにツッコミを入れて場の空気を凍りつかせるよりは, こういったアプローチで穏便に推めた方がトータルで良い結果になる, ということはありそうと思いました.

最後に, 本書で少しモヤっとしたところを挙げると, 先に「実例を盛り込みながら」各種の原則を紹介している, と述べました. その例が, 一部かなり出来すぎなものがあって, 「本当にそんなにうまくいくか...?」と思ったりした部分がありました. ...まあ, この辺りは, 本書で紹介されている原則が万事うまく有効に効く, という事はなくて, 原則を意識しながら生活したり, 仕事をしていると, 時折うまく"刺さる"場面があり, それを抜粋したものだ... と捉えると, 「確かにそういう事もありそう」という気持ちになるので, 自分自身そこまでの違和感にはなりませんでした.

今現在の自分自身にも活きる原則も多々ありましたが, 本書で紹介されている原則が本当に活きるのは, 今後自分自身チームを率いたり, あるいは今以上に部署間, 会社間のコミュニケーションをする機会が多くなった時ではないかと想像しています. そういった時に改めて本書を読み, その原則を意識出来ると, 意識しないより, うまい立ち振舞いが出来るようになるのではないかな, と思いました. 一方で, 他者とのコミュニケーションをもっと潤滑にしたい! ...と考えているなら, 「人を動かす」, 「人に好かれる」の辺りをつまみ食いするだけでも, 得るものはあるのではないかと思います.

次は, 「戦略思考コンプリートブック」を読んでいます.