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技術的なことや仕事に関することを書いていきます.

「より良いミーティング」を目指して意識していること

最近, ミーティングをセッティングする機会が徐々に増えてきました. 業務の中でミーティングを開催するということは, 同僚の有限な作業時間を拘束することになるので, なるべく有意義に, 生産性が高くなるように実施したいものです. それを実現するために, 個人的に意識している3つのポイントを紹介します.

はじめに

一言でミーティング... と言っても, いろいろな種類のミーティングがあると思います. 個人的には, 少なくとも3つの種類があるのではないかと思っています.

  • 収束させるミーティング
  • 発散させるミーティング
  • チームのためのミーティング

「収束させるミーティング」は, いわば"決めるため"のミーティングです. なにかしらの前提情報があり, それに基づいていくつかの選択肢が考案された状態で, その中のどれを選択するかを協議する(時と場合によっては, 用意された選択肢から採択をせず, 別途新しい選択肢を考え直すという結論に至ることもあるでしょう)... 要するに意思決定のためのミーティングです.

一方で, 「発散させるミーティング」は, いわば"アイデアを出す"ためのミーティングです. 前提情報や現状分析の結果などを元に, ブレインストーミングなどの手法で, 選択肢(アイデア)を出すためのミーティングと言えるでしょう.

最後の「チーム運営のためのミーティング」は, チームの相互理解を深めたり, チームの開発サイクルを回すためのミーティングです. 例えばチームビルディングのための会であったり, スクラムを採用しているのであればスプリントの計画会や振り返り会などが該当します.

これを踏まえて, この記事では特に「収束させるミーティング」をセッティングする時に考えている事を紹介します. 具体的には, 以下の3点です:

  • 30分で終わることを目指す
  • 最少人数になるよう招待する
  • 事前にアジェンダを作って共有する

30分で終わることを目指す

長いミーティングは参加する側としても大変です. 更に, 時間が長くなれば長くなるほど, 多くのメンバーの作業時間を拘束することになります. そのため, ミーティングをセッティングするにあたっては, なるべく短い時間で議論が終わり, メンバーの時間を拘束しすぎないように工夫するのが極めて重要であると思います. 話す事柄(議題, 決めたい事)の数にもよりますが, 大抵の場合は30分で終わるように意識すると良いのではないかと思っています. そのためにも, 後述する「最少人数になるように招待する」や, 「事前にアジェンダを作って共有する」といった部分を意識しながら事前準備をしておいて, ミーティングそのものはなるべく短い時間で終わるように工夫するのが, ミーティングをセッティングするにあたって大事になってきます.

例えば, 5人で実施するミーティングがあったとして, そこに準備なしで挑む代わりに1時間が必要になったとすれば, 1時間 x 5人で5時間を使うことになります. 一方で, ミーティングをセッティングする人が1時間の事前準備を実施し, その成果を他の4人が事前に5分かけてチェック, それによってミーティングが30分で終わるのであれば, 事前準備の1時間, 事前チェックの40分(5分 x 4人), そしてミーティングに30分 x 5人 = 2.5時間なので, 合計で4時間10分になります. 50分の時間が浮きますね.

たまに, 今後のアクションなどを決める(= 収束させるミーティング)なのに, 最初の10分〜20分を使ってその前提状況や選択肢について長々と説明してしまう事があるように思います. もちろん, 重要な部分については仮に事前に資料などを配布していたとしても, ミーティングの場で改めて共有/確認する必要はあると思います. とはいえ, 事前に資料を提供することもせず, ミーティングで初めてそれを展開して, 全てを説明してから本題に移行する... というのは, 結構時間の無駄なのではないか? と感じています.

また, 「30分で終わることを目指す」と, ここまで述べた「拘束時間を短くできる」以外にもメリットがあると思っています. 例えば会議室不足の解消に寄与できる, というメリットがあると考えています. 最近メンバーが増えて, 会議室が足りなくなってきている... という問題に直面している方は案外多いのではないでしょうか. そのような状況で「30分で終わることを目指す」ことは, 会議室の回転率を上げ, 結果としてより多くのミーティングを会議室で実施出来るようになる(会議室探しで苦労することが減る)のではないかと思います. そのように考えると, 「1時間で終わるかどうか微妙なので, 念の為1時間抑えておく...」というのは, 非常に良くないアクションだと思っています. 仮に30分で終わった時, 残りの30分間にわたって会議室が無駄になってしまうからです.

...そもそもとして, ミーティングが30分で終わらなかった場合, 30分延長するのではなく, むしろ別のタイミングで30分のミーティングをセッティングした方が良いのではないか... と最近は思っています. もしミーティングが予想以上にヒートアップしてしまったのであれば, 時間をある程度置くことでクールダウンすることができます. また, 30分話した事を元にして再び事前準備を実施することで, 次の30分はより準備の出来た状態でミーティングに望むことが出来るはずです.

より良いミーティングができるかどうかは, ミーティングでどのように話すか, 議論するか, 説明するかではなく, むしろミーティングが始まる前からの準備にかかっている... と言っても良いでしょう. そのためにも, 「30分で終わらせる」ことを意識し, そのために必要な準備を丁寧に済ませておく... というのが, ミーティングをセッティングするにあたって重要であると考えています.

最少人数になるよう招待する

前述した, 「30分で終わることを目指す」ためにも, ミーティングの人数は極限まで絞るのが重要であると考えています.

ミーティングを実施するにあたって, 人数を増やすことは2つのコストが増加します. 1つは単純で, ミーティングによって費やされる時間が線形的に増加します. 30分のミーティングであっても, 10人で実施すれば30分 x 10人で300分の時間が費やされることになります. 加えて, 「収束させるミーティング」においては, 収束させるためのコストが指数関数的に増加すると思っています. 何かしらを決めたり, 議決するためのミーティングにおいては, 参加する全メンバーが同じ認識を共有して, それに基づいて意思決定をしなければいけません. しかし, 参加するメンバーが増えれば増えるほど, 認識を共有するコストは増えていきます. 話を聞き逃してしまったり, 勘違いしたり, 時と場合によっては意図的に曲解されてしまう事があるかもしれません. その結果として, 議論が紛糾して, 予想以上にミーティングに時間がかかってしまう......... そういった事態を防ぐためにも, 正しい決定が出来る範囲で, ミーティングに参加する人数を絞る必要がある訳です.

例えば, 2つの部署が連携して, ある施策を実施しており, そのための意思決定をしなければならない場合を考えます. この時「念の為...」という気持ちで, 自分たちの部署のリーダーや, 相手部署のリーダーと, エンジニアと, プランナーと... といった風に参加者を増やしてしまえば, ミーティングのコストはみるみる高騰していきます. そうならないためにも, ミーティングで意思決定したい事項について, 一番責任を持っている人(判断が出来る人)を必要最小限かつピンポイントに招集するのが重要であると考えます.

もしも技術的な話題が主なのであれば, お互いのチームのエンジニアリーダー的なポジションの人を呼べば, 意思決定を行うにあたって必要十分なはずです. また, 企画や機能要件などの話題であれば, 真っ先にミーティングの参加者候補として名前が挙がるのは部署のリーダーになるかもしれません. ...が, 自分たちのチームや相手のチームをよく観察すると, ミーティングで話したい話題についての権限が, 他のメンバーに委譲されている場合もあると思います(自分たちの部署と連携している施策については, 相手部署においてチームリーダーではなくプランナーの人が権限を持っている... など). そういう場合は, 権限を委譲されているメンバーを中心にミーティングに招集することを意識しなければなりません.

事前にアジェンダを作って共有する

経験則として, アジェンダのないミーティングは迷走しがちです. アジェンダがないミーティングは, 何を話すか, 何を決めるかについて, 参加者が各々の考えを持って参加することになるので, 意見が噛み合わなかったりしがちです.

そのため, より良いミーティングを目指すためには「事前にアジェンダを作って共有する」ことは必要な条件であると考えています. 少なくとも, 以下の3点を事前に参加者に対して共有する必要があるでしょう:

  • 誰が参加するか
  • 何について話すか
  • 何を決定したいか

加えて, 事前にチェックしておくべき資料があれば, それも共有しておくと良さそうです.

さて, このように事前にアジェンダを作っておく事は, 幾つかの利点があります.

まず1つは, そもそもミーティングを実施する必要があるかどうかをチェックできる, という点です. 特に, 先に挙げた3つの項目のうち, 「誰が参加するか」, 「何について話すか」は定まっていて, 「何を決定したいか」が不明瞭な場合, 「ただ単に共有がしたいだけではないか...?」と気づくことが出来ます. 内容にもよりますが, 単に共有がしたいだけなら, グループウェアやSlackなどのチャットツールで共有することができれば, ミーティングで時間を拘束することなく目的を果たせるはずです.

もう1つは, フィードバックを受けて, アジェンダをブラッシュアップ出来るという点です. 事前にアジェンダを共有することで, 「この人も参加するべきでは?」とか, 「この観点についても話す必要あるのでは?」とか, 逆に「これは話さなくても良いんじゃない?」といったフィードバックが得られることがあります. それを元にアジェンダを修正していけば, より有意義なミーティングが出来るはずです. 結果として, ミーティングが始まった後に「この人も呼ぶ必要があるのでは?」とか, 「これは話さなくてもいいのでは?」といった話題が登場して, 「なるほど, また別途ミーティングを開きましょう...」となり, 結果として集まった時間が無駄になってしまう... という事態を防ぐことができます.

最後の1つは, アジェンダを事前に用意することによって, ミーティングの流れやゴールのイメージを予め全員で共有することができるという点です. ミーティングを実施するにあたって, 話したい事や決めたい事についてのイメージが参加者の間で異なっていると, 大抵の場合迷走してしまいます. 事前に共有するアジェンダは, そういった迷走を防ぐ, 「ミーティングの水先案内人」の役割を果たしてくれる訳です.

まとめ

「収束させる(決める)ミーティング」を主催するにあたって, 意識していることを3つ紹介しました. 結論から言えば「事前準備で決まる」という一言に収束出来ると思っています. とはいえ, その準備に時間やコストをかけすぎると本末転倒で, とはいえ準備しないと(前述のように)無駄が多くなったり, 迷走したりするので, 程よいサイズ感の事前準備が求められる, という気がしています.

どうしても, 複数人/複数部署で仕事などをするにあたっては, ミーティングというアクションが必要になってくると思います. 皆さんは, ミーティングに望むにあたって, あるいはその準備をするにあたって, どういったポイントに気をつけていますか? 何かしら意識していることがあるという方は, 是非はてなブックマークのコメントなどで教えて頂けると勉強になります.

これからも, より良く有意義なミーティングが出来るよう, 試行錯誤していきたいと思っています.

「Hatena Engineer Seminar #12」で「Perlでもトレーシングがしたい!」という話をします

本日告知がありましたが, 「Hatena Engineer Seminar #12」で「Perlでもトレーシングがしたい!」という話をします!!!

developer.hatenastaff.com

Perlで開発されているはてなブログで, AWS X-RayやSentryを導入する試行錯誤について話す... 予定です.

京都オフィス/東京オフィスの両方で開催し両方で話しますので, はてなブログの開発の裏側に興味がある方, 開発メンバーと会話してみたい! という方は是非ご参加ください. お待ちしております!

hatena.connpass.com

hatena.connpass.com

「学びを結果に変えるアウトプット大全」読んだ

学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)

学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)

どこかのブログで紹介されていて, タイトルだけ見て「面白そうかも...?」と思って買った本でした. ここ最近, インプットについて良いリズムで取り組めるようになったので, 改めてアウトプットにも目を向けてみよう, と思ったのでした.

著者は精神科医で, 実際に本の執筆だったり, メルマガやYouTubeなどで本書に書かれているようなアウトプットを実践されている方です. 著者が精神科医ということもあってか, 「エンジニアの知的生産術」と同じように, 脳科学などの研究結果に基づいて, より良いアウトプットの方法が説明されています. "アウトプット"と言うと, エンジニアであればブログを書いたり勉強会で発表したり, そういうのを連想しがちですが, 「他人とのコミュニケーション」も"アウトプット"の一環ということで, 他人に対して説明をしたり, 説得したり, あるいは褒めたり叱ったり謝ったり... といった内容にも触れられているのが印象的でした.

個人的には, 先に名前を挙げた「エンジニアの知的生産術」だったり, あるいは最近読んでいた「小さな習慣」や「ハーバード流交渉術」でも紹介されていた内容もいくつかあったので, それらの復習(思い出し)のように読むことが出来てよかったです.

また, これまで経験則で「こうやると良さそう...」と思っていたことについて, 科学的な裏付けなどが与えられたという感覚を得ることができました. 例として, 「何となく仕事に集中出来ない時はとりあえず"刺し身たんぽぽ"のような単純作業でエンジンをかける」という事をよくやっているのですが, これは研究でも効果があると調べられていて, 「作業興奮」と呼ばれているということ, 「作業興奮」に至るまでの時間は5分程度, ということを知る事ができました. これに基づけば, エンジンがかからない時のために, 日頃から(分割して)5分〜10分程度でできそうなタスクをストックしておくと, いざという時に役立つかもしれませんね.

また, 「判断の基準」の話も面白かったです. この本の著者は悩んだ時, 「ワクワクするかどうか」と「最初に思いついた方を選ぶ」という軸で判断をしているそうです. 後者については「ファーストチェス理論」というものがあり, チェスのプレイヤーに盤面を見せ, 5秒後と30分後にそれぞれ次の手をどうするか問うと, 86%が一致した(つまり, 5秒で直感で決めた答えと30分かけて熟考した答えは86%で一致した)という研究成果も紹介されています. 個人的には, とにかく後悔しないように, 「判断して, やると決めたらやりきる」よう心がけていますが, その手前として「判断する基準」を自分の中で作って定めておくのも大事そう, と気づくことができました.

Twitterやブログにテキストを書き出すのはもちろんのこと, 仕事でコードを書いたり, ミーティングや雑談で他人と会話したりするのも立派なアウトプットです. そこに課題を感じていたり, あるいはもっとクオリティを高めてみたい, と思っている人は, この本をサックリ読んでみると得るものがある... かもしれません.

次は id:shimobayashi さんにオススメしてもらった「失敗の本質」を読む予定です.

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

  • 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/08/01
  • メディア: 文庫
  • 購入: 55人 クリック: 1,360回
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「Gotanda.EM #2」で1on1について話しました

「Gotanda.EM #2」で1on1について話しました.

papix.hatenablog.com

今期からシニアエンジニアになって, これまで1on1をしてもらうだけの側から, 1on1をしてもらいつつ, 自分もメンティーを持って1on1をする, という立場になりました. これまでの1on1体験を踏まえて, 新米メンターがどういうポイントを意識して1on1に望んでいるか, というところまとめてみました.

1on1, 難しいですが, 個人的には楽しい(得るものが多い)と思ってて, とはいえ現状で満足せずに, メンターもメンティーもより多くのものを得られるように改良していきたいと思っているので, 良い知見などあれば是非教えてもらえると嬉しいです.

はてなにおける1on1制度については(資料でも触れましたが)この辺りのエントリが参考になりそうです:

developer.hatenastaff.com

blog.shibayu36.org

「仕事の問題地図」読んだ

仕事の問題地図 ~「で、どこから変える?」進捗しない、ムリ・ムダだらけの働き方

仕事の問題地図 ~「で、どこから変える?」進捗しない、ムリ・ムダだらけの働き方

会社のSlackで id:onk さんが推薦されていて, 面白そうと思ったのでさくっと読んでいました. チームで仕事をするにあたって現れる様々な問題点, 例えば「計画がない」, 「進捗がわからない」, 「モチベーション不足」, 「意見が出てこない」... それらに対して, どのようにアプローチしていくかについてのアイデアがまとめられた本です.

個人的には, 最初の「計画不在」の章が良かったと思っています. 昨今いろいろな計画を建てる機会が増えてきていて, どのように計画を作るか... というところで試行錯誤していたので, 良いアイデアを幾つか見つけることができました.

  • 構造化してみる
  • 計画表を書いて相談してみる
  • 未知か既知かを皆で判断する
  • 情報共有の旗振り役を置く

「構造化してみる」では, 仕事(タスク)を複数の段階に分けて構造化するアイデアが紹介されていました. 第1段階では命題(テーマ)を書き, 第2段階には目的を, 第3段階に目的達成のためのアクションを, 第4段階以降はそのアクションを成し遂げるために必要な細かな作業項目を, それぞれ"モレなくダブりなく"書き出していく... という形で構造化していく方法です. そこそこの規模のプロジェクトを開始するときは「インセプションデッキ」などのテンプレートが使えますが, 小規模〜中規模なタスクの計画であれば, この構造化を使った計画作りをうまく使えそうな気がします.

やはりチームで仕事をやっていくにあたって, 「銀の弾丸」と言えるものはなくて, 本書でも仕事をするにあたっての問題を文章化して図示して(地図にして)理解しやすいようにして, それに対する地道な解決案を示していく... という感じになっていて, 分析すること/それを元に手を打っていくことが重要そう, という気持ちになりました. とはいえ, そういう時に分析の助けとして, あるいは分析結果から次に打つアクションを考える種として, 本書があると「そういえば, 似たような内容が...」という感じにヒントとして使えそうです. また, 「はじめに」に書かれているように, チームでこの「問題地図」を眺めて, いま自分たちのチームにはどの辺に問題点がありそうか? と発見する目的で使うのも良さそうです.

そういう意味で言えば, 社会人になって2〜3年目くらい, 徐々に業務に慣れてきたタイミングでこの本を読めると, 視点が個人からチームに広がって良い影響があるのではないかと思います. 個人的には, ここ数年で視野が広がった感覚があるので, 「視野が広がった!」というよりは, 「視野が広がって見えてきた問題点に対して, こういう向き合い方ができるかな...?」と考えながら読むことができました. サックリ読めますし, 良い本だと思いました.